『チャーリーとの旅』からひろがる本の旅

朝から元気に蝉が鳴き始めました。
梅雨明け間近でしょうか。

山歩きもジョギングも難しいお天気にあたってしまったオフの日は、座り込んで、うっかりタブレットを触ろうものなら沈没間違いなしなので、強~い意志を持って電源をオフして、本をそっと開きます。

人との出会いもそうだけど、本も、偶然出会った一冊から別の作品へ、また別の本へ、映画へ、料理へ、旅へと自分のアンテナだけではキャッチできない世界へ誘われるチャンス。
残り時間は減っていく一方の人生、忙しくし過ぎず、せっかくの出会いを受け止められる気持ちと時間のスペースを空けておきたいな、と思うことが増えました。


先日、巡り会えてラッキーだったなと嬉しかった本は『チャーリーとの旅』

著者はジョン・スタインベック。
聞いたことあるなぁと思っていたら、「エデンの東」や「怒りの葡萄」を書いたノーベル賞作家でした・・・、どちらの作品もわたしは読んだことないです(-_-;)。

押しも押されぬ大作家になっていた58歳のときに、「わたしは自分自身の国を何も知らない」と愛犬チャーリー(フランス生まれの老犬プードル)を相棒にキャンピングカーでアメリカ一周の旅にでるという紀行文。

5年前に縁あってアリゾナ州を旅したけれど、一日ガンガン車を走らせてもまだ同じ州内だった!という広大すぎるアメリカを、東海岸のニューヨークから西海岸のカリフォルニアを巡り、南下してテキサス、ルイジアナ州を走ってぐるり一周、愛犬がお伴とはいえ、4か月で16,000㎞をひとりで運転、踏破するなんて想像もつかない。
巻末に小さな地図
位置を確認しながら読み進めるのも楽しい


しかも漫然とした道中記などではなく、そこは文豪、常に思索に満ちていて、公民権運動と大統領選に揺れる1960年代のアメリカを肌で感じながらも、ただ気ままに巡り、州ごとに違う風景や文化、人々との交流、パンクトラブル、孤独、寂寥感を愛犬チャーリーに語りかけるように綴るのです。

旅をすると、高揚感からなのか、普段は話さないような深い話をしたり、知らなかった一面が垣間見えたりするものですが、まるでスタインベックの旅友になって、一緒にアメリカをドライブしているような妄想旅気分に浸ってしまいました。

そして先日、映画『ノマドランド』を観てモヤモヤしたものしか感じとれなかったので、原作「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を読んだのですが、その中に、スタインベックのこの旅は、ノマドのあいだで人気があると書かれている一文を発見して、読んでいた本が偶然にもここに繋がってきて、おっと!と思いました。

ただ、同じ”反文明社会”を理想とかかげながらも、苦しい境遇で現在のアメリカを放浪するノマドたちと、”帰る家のある”スタインベックの旅とは乖離が大きい。
だからこその届かぬ憧れなのかもしれないけれど・・・。


1962年に書かれた「チャーリーとの旅」の翻訳は日本では1964年が初出で、わたしは2007年に翻訳再出版されたものを読んだのですが、翻訳者の竹内さんは作家でもあり「図書館のキリギリス」「図書館のピーナッツ」を以前読んだことがあったので、ここでも不思議なつながりを感じてしまいました。

「図書館のバシラドール」というシリーズ3作目も昨年出版されていることを知り、早速読んでみたら、この「チャーリーとの旅」をヒントに高校生がひとり旅に出たり、図書室でビブリオバトルをするというストーリー展開で二度美味しい読後感。

”図書館シリーズ”とも呼ばれる高校の図書室を舞台にした竹内真さんのこの作品、ほっこりとした内容で、とても読みやすく、ふだん便利に利用させてもらっている図書館や司書さんの仕事や仕組みを垣間見れたり、ストーリーにそって様々なジャンルの本がじゃんじゃん出てくるので、読みたい本がまた増えたりと、本好きさんにはおススメのシリーズです。

チャーリーとの旅からはじまったわたしの本の旅、最後は「怒りの葡萄」を読んでみようかなと、手元にもうあるんですが、けっこう分厚く、しかも上下巻2冊・・((((;゚Д゚))))

以前のように、飛行機に長時間乗る旅に出れるなら、今、まっさきにこの本を荷物にいれるだろうな、きっと。

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