『ブリット=マリーはここにいた』と”小そうじ”のすすめ

”大そうじ”、好きですか?
わたしは苦手です・・・。

溜まりに溜まった物や埃、
ここも、あそこもやらねばと思うと気持ちは萎えるし、
時間も労力も、より効果のある掃除グッズを買ったりしたら
余分なお金もかかるわで、
ただでさえ忙しい年末にぐったり疲れるわりに、
その魔法はあっという間に消え去り、またいつもの状態に早戻り、、なんてことも。

だったら、毎日の”小そうじ”の方が断然らくちんで、
年中、快適に、こざっぱりと暮らせるので、
いつからか、わたしは、家族から恐れられるほどの 妖怪”小そうじ魔”に(笑)。

”へちまたわし”完成!
見れば見るほどすごい繊維
来年は”天然たわし”一年分のへちまを栽培したいなぁ

いつもどこか拭いていたり、履いていたり、
シンクやテーブル、床に物があったりすると落ち着かなくて、
直ちに片付けせずにはいられない。
家族は、大切なものまで捨てられるんじゃないかとハラハラしっぱなしらしい(笑)。

でもね、カラダも同じだと思うのです。
まとめてど~んと運動したり、ストレッチしても、良い状態を保てるのは数日。
しかも、年齢とともに、翌日の筋肉痛などのダメージも倍返し、怪我もしやすくなります。

”まとまった時間”ができたら運動しようと思っていても、
”まとまった時間”はそうそう作れないものだし、
それが3年先、5年先になったら、
運動しようにも、今よりも体力も気力も落ちているかもしれない。
人生でいちばん若いのは来年より今年、来月より今月、明日より今日。
10年後の自分のために、カラダの”小そうじ”はじめてみませんか。



そんな”小そうじ魔”のわたしが、これは、未来のわたしですか!?と思うほどの
“スーパー綺麗好き偏屈おばさん”が主人公の物語を読みました。


同じ作者の本だと知り、きっと期待を裏切らないと思い読んでみました。
穏やかな作風らしく最後までいくのかと思いきや、結末近くになるとそわそわしてくる展開に。
ブリット=マリー、どうする、どう落ち着く?と自分のことのようにドキドキしながら、
結末は期待を超えるハッピーエンド。

ネタばれになってしまうので、詳細を書くのは控えますが、
重曹とTO DOリストは人生の必需品!と、
とてつもなくきっちり、きれい好きな63歳の主婦ブリット=マリーが、
理由あって家を出ていくところから物語は始まります。

40年ぶりに仕事を探す職業安定所から、もう、それはそれは、
空気読めなさ過ぎ、つまづき過ぎでしょとツッコミをいれたくなる(笑)。
無理くり見つかった仕事も、そこでの新しい暮らしも、想像以上に波乱万丈。

でも、日常の小さながっかりや退屈さに目をつむり、
変わるにはもう遅すぎると「まもり」に入っていた生活から、
仕方なくでも一歩動き出したことで、ブリット=マリーだけでなく、
巻き込まれた周囲の人々の見る景色や世界まで、
色鮮やかな、生き生きとしたものに変わっていきます。

『自分はここにいる』『ここに居場所がある』という存在意義と安心感、
誰かを必用とする、必用とされるという嬉しさや温かさを味わっていくところは、
専業主婦とか働いているとか、男性とか女性とか、若いとか年とっているとか関係なく、
誰もが深く共感できるのではないかなと思います。

北欧というと、勝手なイメージ先行ですが、
男女平等、女性の社会進出がすすんでいて、
社会福祉制度も充実している感ですが、
登場人物のバックグラウンドや心の声が丁寧に綴られるこの本を読むと、
ブリット=マリーのような主婦もいれば、移民の置かれた状況、
経済危機による市町村財政の破綻など、世界中、大きさは違えど問題は同じなのだと。

前作同様、映画化もされていて、調べると静岡県内でもミニシアターで順次上映中。
ちょうど時間が作れたのが県東部だったのですが、
そこはもうビュンとひとっ走り、柿田川公園近くの映画館に行ってきました。

本を読んでから映画を観たたため、90分という尺の関係とはいえ、
映画は、はしょり過ぎ感が否めませんでしたが、
ブリット=マリーを演じたスウェーデンの国民的女優さん(スターウォーズにも出演していた!)、
初めてお見かけする俳優さんたちの役柄が原作にぴったりで
ストーリーを知っていても、涙がほろりとこぼれました。

映画を観てから原作を読むと、より臨場感を感じながら物語の世界に入り込めるかもしれません。
原作は映画の10倍は奥深く、主人公だけでなく、小さな登場人物それぞれの丁寧な描写を
読むと、もうトリビアの世界の楽しさ。
行ったことはないけれどスウェーデンの小さな町ボーリーの住民のひとり、
ブリット=マリーの隣人になった気分に。

浜松での上映はこれからの予定だそうですよ。

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