「食べることと出すこと」「使うことと捨てること」

新しい年がはじまって1か月、
明日は節分、春のはじまりですね。

ちょっとまとまった時間ができたら、春の陽ざしたっぷりの窓辺で、ぽかぽかしながら「読書」と「うたた寝」を繰り返す、
なんて極上な時間。

図書館で予約しておいた本は、たいてい、いつものんびりと、ちょっと忘れたころにやってくるのですが、またそれも楽しみのひとつになってます。
今回、一緒のタイミングで届いたのがこの2冊。

「食べることと出すこと」(著:頭木弘樹)

どちらもまったくジャンルが違うような感じがしますが、読んでみたら『循環システムの異常事態』という繋がりがありました。
一方は”身体”、もう一方は”地球”。

「食べて出す」ことが、あたりまえでなくなったら?

という問いかけではじまる、頭木さんのお話は、大学生の時に潰瘍性大腸炎を患い、その後13年間の闘病記を綴ったもの。
以前に読んだ『絶望名人カフカの人生論』の作者だ!と知って読んでみようと思いました。

一般的な闘病記とはちょっと違っていて、もちろん潰瘍性大腸炎という病について、とても詳しく知ることができるのですが、その様子が読書(とくにカフカ)に救われたという頭木さんらしく、世界各国の作家、作品を交えながら綴られていて、古典から現代ものまでの名作をいっきに読んだような充実した読後感が味わえました。

執筆活動がなかなかすすまなかったということで、たまたま5年目に入ってしまったという昨年、コロナパンデミックが起き、そのあとに書かれたという後半部分は、”闘病中”と”コロナ禍”に共通する「社会の生きにくさ」「共感してもらうことの難しさ」などハッとさせられる箇所がぎゅっと詰まっています。

少し前に話題になったブレイディみかこさんの“エンパシー”という言葉に通じるものを感じつつ、闘病者ご本人だからこその想い、あとがきの中で引用されている文章のひとつ、山田太一さんの言葉がさらに、とても響きました。
想像力はもちろんのこと、謙虚さもとても大切なのだと。

「災害にしろ、病気にしろ、経験した人としない人ではものすごい差がある。一生懸命想像はするけれど、届かないものがあるということを忘れてはいけないと思う」


もう一方は、NHKの番組「逆転人生」で取り上げられていたのを見て読んでみようと思った本。

父親が創業した産廃会社の社長になり、住民運動による廃業、倒産の危機を乗り越え、里山の再生、自然との共生とともに見事に会社も再生させていく長い長い闘いの実話。

「ゴミを見ていると未来がわかる」と石坂さんは言います。
一見とても元気なのに、排泄物を見るとその人が病気だとわかることがあるように、社会も人間の体と同じで、社会の排泄物=ゴミを見ていると、深刻になってくる問題が見えてくるのだと。
循環システムの破綻は、身体も、自然も同じ。

どんな仕事をしていても、どんな暮らしをしていても、ゴミはでる。
どんどんものを買って、次々に捨てていくという「便利さだけを求める生活」はもう皆が考え直し、大切にしたいものを選び、捨てたあとのことも想像する。自分のゴミに、最後まで責任を持つ。
これで未来はだいぶ変わるといいます。

常日頃からゴミをなるべく出さないこと、減らすことに、家族からはうるさがられるほど(笑)注力しているわたしですが、読了して、まだまだだなぁと反省。

・Reduce(減らす)・Reuse(繰り返し使う)・Recycle(再利用する)

という基本の3Rに加え、4つめのRとして、

・Repair(修理して使う)
・Refuse(断る・要らないものは使わない)

が定着化してきた今、ゴミ処理のプロフェッショナル石坂さんが加えたいのは、

Respect(敬意をはらう)

敬意を払うのは海や川、山といった自然環境だけでなく、
日々触れる「もの」や使う「もの」、
自分とは違う立場の人、違う国の人、次の世代の人のこと、
そういったあらゆるものに感謝と配慮の気持ちを持つことができたら、
ゴミを捨てる”その一歩先”を想像したり、その一歩前の「買う」「手に入れる」という選択肢も変わっていくのではないかと。
寿命の短いテフロンに疑問を感じていて
昨年ようやく鉄フライパンに切り替えました
すこぶる快調!もう買い替えはおしまい

”身体”から”地球”まで、きちんと循環させることが”健やかさ”の基本だとつくづく感じました。

心にとめておきたいのは「想像力」「謙虚さ」「敬意」「感謝」「配慮」。

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