図書室からはじまる愛(著:パドマ・ヴェンカトラマン)

土曜のレッスンを終え、日曜早朝通いの自主練が終わると、月・火がオフのわたしの一週間は一段落。

年末年始のお休みに読もう!と借りた本の返却期限が、あっという間にせまってきたので、山に行くのは来週のお楽しみにして、今週は耽読。

コロナで実質上の鎖国!?状態になって2年あまり、テレビの旅番組が軒並み再放送や再編集になっていくように、図書館の〈旅行記の書棚〉も目新しいものがなくなってきているように感じます。

そんな中、図書館のマイ巡回ルートに追加されたのが〈外国文学の翻訳小説の書棚〉。

映画化された物語の原作本をはじめ、以前はあまり翻訳されてこなかったであろう北欧、アジア、南米と様々な国の現代作家が書いた物語の翻訳本も続々と増えていて多種多彩。

映画や海外ドラマも英米以外の国の作品、増えてきましたものね、これぞネット時代の恩恵、万歳。

なかでも、Y.A(中高生向け)コーナーにある翻訳小説は、ストーリーや人物像、人間関係、心理描写が大人向けのものよりシンプルなので、物語に入り込みやすく、訪れたことのある国だったら、なおのこと、より身近に感じたり、新しい面を発見できたり、楽しさが募ります。

インド、チェンナイ生まれ、19歳の時に進学で渡米した女性が書いた小説『図書室からはじまる愛』もそのひとつでした。

カーストの最高位ブラーフマン一族の物語ということもあり、ヒンドゥの神々の祭りの描写とともにストーリー展開されていくので、色鮮やかな寺院や供物家々の前に描かれるコーラム新調される晴れ着のサリー、ジャスミンの髪飾りの香りなどインドの情景がありありと目に浮かんできます。

時代は宗主国イギリスからの独立機運の高まる1940年代、物語は一家が暮らしていたボンベイ(ムンバイ)での8月のクリシュナ生誕祭から始まり、ガネーシャ祭が終わるころ、一家の生活は激変し舞台はマドラス(チェンナイ)へ。
ナヴァラトゥリ、ディーパヴァリ、収穫祭ポンガルへと季節が進むごとに、主人公の15歳の少女ヴィドヤの生活も変化し、直面する悲劇や葛藤、社会や家族の束縛に負けず、人生の階段をひとつずつのぼって成長していきます。

物語の重要な構成要素でもあり、ヴィドヤを支え、勇気づけたのが、秘密の図書室の文学作品をはじめ、暮らしとともに脈々と受け継がれる聖典『バガヴァッド・ギーター』やガンディーが唱えた『非暴力不服従』の精神。

来週のヨガ哲学講座のテーマである『バガヴァッド・ギーター』が、こんな風にインドの人々の暮らしの中にごく自然にあるのだということが知れて、講座がいっそう楽しみになります。
八百万の神と祭りごとをする民
@国立民族博物館 南アジア展示コーナー

Y.Aの翻訳小説でもうひとつ印象深かったのが、『水曜日のうそ』(著:クリスチャン グルニエ)
こちらはフランス児童文学で、老いをテーマに、孫娘の視点から描かれる家族の物語。

家族だからこそ言えない本心、思いやりのウソ、保身のウソ。
会えば同じ話ばかりするおじいちゃんが孫娘にぽつりと言う
「年をとるというのは、自分の周りの空間が縮んでいくのを見ていることなんだ・・・」
という言葉は、家族が集まることが多かった時期ゆえか、深く刺さりました。

家族の在り方が日本とは少々違うフランスでも、親との関わりでこんな風に感じたりするのだなぁと驚く一方、隣人や孫娘のボーイフレンドといった縁あって出会う他人との関わりが、おじいちゃんの人生の最後を豊かにしてくれるという展開がやっぱりフランスらしく、「遠くの親戚より近くの他人」は超高齢化時代を生きるヒントかもしれないな、なんて思いました。

12月に京都に行った際、このチラシに魅かれ、
大阪の万博記念公園内にある「国立民族博物館」に寄ってきました
常設展示をぐるりと見るだけでも世界一周旅行気分♪

〈太陽の塔〉を後ろから眺めるのも新鮮でした(笑)


ヨガレッスンに来られる方、嬉しいコトに〈本好きさん〉〈本の虫さん〉が多いんですよね。
今年も、わたしの未踏の領域の本や作家さん、ぜひ教えてくださいませ。

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